01月12日：坂本龍一　＠渋谷・NHKホール

  NHKホールでのライブですが、いろいろな面で新鮮に楽しむこと
が出来ました。このMLで多少の情報は入ってしまっていましたが、
持っていたイメージを越えるものをみせてもらったと思います。

  演奏がはじまってまず驚いたのが、教授のピアノが全面に出てい
ないことでした。オーケストラをバックに教授がピアノを弾くよう
な形を想像していたからなのですが、教授もオーケストラの一員と
なったうえで全体が一つになって音楽を奏でていたように感じられ、
興味深かったです。別にピアノがメインでなくても、曲を通じては
っきりと存在を主張しているように思いました。
  初めは音をきちんと聴こうとか、映像をきちんとみようと気負っ
ていたため、うまく受け取ることが出来なかったのですが、力を抜
いて音と映像に身をまかせるようにすると、よりスムーズに感じる
ことが出来ました。この音と映像とに包まれるような感じは、非常
に心地よかったです。

  演奏では「untitled 01」の第４楽章が強く印象に残りました。
画面に映る様々なメッセージに思いをはせている間にいつの間にか
音が鳴りはじめていて、自然な流れで音の世界に引き寄せられた感
じでした。それまでの３つの楽章の要素が合わさってより高いとこ
ろへと昇華されたような印象を受け、あとからこれが「救い」とい
うメッセージなのかなと思いました。後半は頭の中が真っ白になっ
て、ただただ音を素直に受け入れていたという感じです。
  その後の演奏も、実に楽しむことが出来ました。特にアンコール
では完全に聴き入ってしまいました。終わってみて２時間弱だった
とは思えないほど、濃い時間だったと思います。

  ただ、全体として非常にわかりにくい面もあったように感じまし
た。例えば１曲目第４楽章の前のメッセージなどは、あれらの人々
を知らない人には何をやっているのか分からなかったのではと。ま
たMaiLEDや、MIBURIによる映像なども、あらかじめ知識がない人に
はなんだか分からなかったのでと思います。
  やりたいこと・表現したいことが大きすぎ／多すぎて、全体とし
てうまく整理され分かりやすい形になっていない部分もあったよう
にも思います。こちらとしてもそれらを十分に受け取れなかった面
もあるのかと。まあ、そういう部分も含めたうえで、実に濃密なも
のになっていたとは思うのですが。

  いずれにせよ、いろいろな意味で実に刺激的なライブをみせても
らったと思います。このライブに関わった全ての人に感謝するとと
もに、今後もこのような試みをより発展させて頂きたいと思います。
  うまく都合がつけば、ぜひ最終日の横浜にも足を運び、今回感じ
たことを再度味わい、また今回感じられなかったことを感じたいと
思います。